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第50回 「大型マンションは結構づくめに見えるが、問題はないのか?」に答えて

三井健太
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「大型マンションは結構づくめに見えるが、問題はないのか?」に答えて

 

大型マンションとは、何戸以上のマンションを指すかの明確な定義があるわけではありません。昔は100戸以上のマンションを大型と区分していましたが、バブル崩壊後、特に2000年以降は300戸以上のマンションも珍しくないため、100戸台と言っても、大型と言えるかどうか微妙なところです。

 

ともあれ、大型マンションには、さまざまな共用施設があり、入居者の利便や生活の潤い、あるいは入居者同士のコミュニティ形成に役立っているようです。

 

周辺地域になかった大型商業施設や医療施設などを備え、何でも揃う便利な生活環境が整備されているものもあります。

広い敷地を活用し、地域の防災拠点の役割を担ったり、伝統的な祭事を敷地内で行ったりするなど、周辺住民と一緒に地域の活性化、安全性の向上に役立つマンションも見られます。

子育て世代、ファミリーには適したマンションと言えるでしょう。

 

マンション入居者専用の施設を挙げると、プライベート公園、ライブラリー、ラウンジ、展望ルーム、パーティルーム、ゲストルーム、キッズルーム、託児所、カラオケルームなどがあります。豪華マンションではプール付きもあります。

こうした施設がふんだんに設けられるのは、戸数あたりにすれば少ないコストですむ、大型開発ならではのスケールメリットと言えます。

 

また、サービス面では、管理人のほかに、コンシェルジェを置いたり、24時間有人管理にしたり、ドアマンを配置するなどですが、これらも、一戸当たりの経費にすれば僅かで済むためです。

 

しかし、問題がないわけではありません。販売上は、いろいろな付加価値があって買い手の関心を引きますし、それでいて毎月の維持費(管理費)もさほど増えないと、まことに結構なのですが、実際に入居後、何年か経つと、こんな施設は要らないという声も少なくはなく、その維持に経費がかかることについて異を唱える入居者もあるのです。

入居後しばらくは、もの珍しさが手伝い、どの施設も利用者が多いのですが、次第に使われなくなるものも出てくるからです。

 

また、24時間、管理人(夜間は警備員)が詰めている必要が本当にあるのかという疑問もあるのです。いないよりは居た方がいいけれども、そのために経費を余分に負担するのはいかがなものかという疑問ですね。使う頻度の少ない施設の維持管理費も小さくはないからです。しかし、作ってしまった施設の維持管理を放棄していいということにはなりません。

結局、不要な施設の維持管理に費用負担を求められ続けるのが、大型マンションの見えない問題点と言えるかもしれません。

 

極論を言えば、修繕積立金も管理費も、半分に値下げできるのにという声は少なくないのです。

 

共用部は「共用の空間」と言えます。エントランスやホール、ロビー以外にも共用の空間があります。共用の廊下、オーナーズラウンジやパーティルーム、ゲストルーム、ビューラウンジなどの共用施設の存在も無視できません。

 

これらは、使わないから無駄だとか、管理費や修繕費など余計な費用がかかるから要らないといった声があるのは事実ですが、あると便利でもあり、使い方次第で価値ある施設も少なくないのです。

 

●使わないと思う共用施設に魅力はないという人へ

 

住宅情報誌・SUUMO(2017年10.24号)に「駅遠でも、築10年以上でも資産価値が落ちないマンションマンション~4つの条件~」という記事を見つけました。

 

記事によると、値上がり条件の1は「管理と良好なコミュニティ」とし、駅9分・築11年で26.3%上がった物件が紹介されています。その中身は、「いつでも対応してくれる管理員の勤務形態」と「住人同士の接点を持ちやすい共用部が充実している」が条件だとしています。

 

他の3条件として、2)商・住一体開発の大規模な“街”開発、3)交通インフラ向上、4)分譲マンションが少ない街の“希少性”を挙げ、具体的な物件も紹介しています。

 

 

本稿に関係ない2~4はともかく、注目したいのは、条件1の「管理と良好なコミュニティ」です。

 

大規模マンションは、例外もありますが、様々な共用施設を備えています。ソフト面では、コンシェルジュを配置して入居者の様々な要望に応えている例が多数あります。

 

大規模物件でなくても可能なものもありますが、規模の小さい物件で導入すれば、分譲価格が高くなりますし、管理費等にも大きく響くので、採用されることは少ないものです。

 

「共用施設は要らない。どうせ使わないから」、買い手のライフスタイル、あるいはライフステージによっては、このような声もあるのですが、共用施設は概ね歓迎されています。

 

住宅情報誌・SUUMOでときどき特集される記事に目を通すと、男女別、専業主婦・働く主婦などの分類によって前後するものの、全体的な人気ランキングは次のようになるのだそうです。

1          コンビニ/スーパー

2          コンシェルジュ

3          フィットネス/ジム

4          ゲストルーム

5          カフェ

 

キッズルームはベスト5の中に見られませんが、専業主婦のカテゴリーでは5位にランクされており、やはりという印象です。

 

ソフト面では、24時間有人管理(夜間警備)によるセキュリティの高さや、各階にゴミステーションがあって、下まで運ばなくてよいといった有り難い設備もタワー物件を中心に用意されるようになりました。

 

 

●大規模マンションのデメリット

いいことばかりではありません。大規模マンションの実態は、スケールメリットを生かして用意した付帯施設・設備が管理費や修繕費を高くならしめるというデメリットもあるのです。

 

24時間有人管理体制にしたことで、管理人・警備員の人件費が3倍、4倍になり、1住戸当たりにしたら必ずしも安くないという場合もありますし、共用施設が多いと、その清掃だけでも費用が増えるということがあります。

 

共用施設は、今の貴方にとって不要と思えても、将来「あってよかった」と思うときが来るのではないか、そんな気がします。

 

「沢山の種類はあっても使うのはほんの一部。こんなに要らない」という声も聴きます。一理ありますね。しかし、携帯電話でも何でもハイテク機器の多くが、一部の人でも「あるといいと思う機能」を付けて商品にしたものが多く、受け入れられているのは事実です。

 

もちろん「かんたん携帯」という機種があることも知っています。しかし、高齢者向けに開発された機種かもしれませんが、高齢者の基準が変わって来ています。そのうちに若い人向けの機能がない携帯を捨てる高齢者も増えて来るでしょう。パソコンだって、高齢者が使いこなす時代なのですから。

 

共用施設が不十分なマンションに魅力を感じない人もこれからは増えるかもしれません。東京では大規模(タワー)マンションが随分増えましたから、現在まだ子供の住人でも大規模マンションの居住経験者が増えているわけです。親と一緒にマンション内の施設を利用するという生活を記憶しています。ブース状になった学習室やライブラリーのような施設を使っている父親の姿を見ているかもしれません。

 

毎週入れ替わる蔵書を楽しみに集まって来るライブラリーの住人、そこで知り合い友人となった関係など、あるいは、思いがけなく様々な職業の住人が身近にいると知って何かと心強く思ったりもするかもしれません。

 

都心住まいのパワーカップルにも歓迎する声があります。子供が学校帰りにライブラリーで本を読みながら母親の帰りを待つ、防音ルームで楽器の練習をする、同年代の子供も多いので一緒にキッズルームで安全に遊ぶ、子供が同級生の親と交流が生まれ、互いに子供を預かったりすることでワーキングママを助けるといったメリットは大規模マンションならではのものと言えます。

 

起業したミセスを助ける施設として、共用部のカフェやラウンジ、ミーティングルームのある大規模マンションは大助かりという声も届きます。

 

こうしたことを考えて行くと、値上がり条件1の「管理と良好なコミュニティ」という言葉の意味も次第に理解が深まるのではないかという気がします。

 

共用施設が貧弱なマンションでも、他のメリットが大きいことによって高い価値評価がなされるという場合もあるのですから、共用施設のないマンションは全てダメとは全く思いませんが、同じような地域・立地で共用施設の豊富なマンションと何もないマンションが並んでいる場合、後者には買い手が中々つかないということも有りえるのです。

 

・・・・・以上の意味で、自分は使わないからとか、管理費が高いからなどと、先入観によって敬遠するのは感心しない購買態度と思うのです。

 

 

 

 

 

終わり

 

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