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長期売れ残りマンションを買う勇気と不安

三井健太
三井健太

これは竣工後2年を経ても完売できない東京23区内の新築マンションを検討する人へ向けた話です。

値引きするからの誘いに心乱れて

竣工2年になろうというのに、まだ販売中。このような物件を、このままの価格で買うのは損ではないかと感じながら営業マンの説明を聞いていたが、気乗りしない態度だったからか、最後になって「今月中のご契約をご承知いただければ、200万円までお値引きをさせていただきます」と提案してきたので、どうしたものかと思い、連絡しました・・・・こう添えて筆者に届いたメールです。

選んだ理由はこうですと5つ挙げてくださいました。

  1. 価格的に購入な物件である
  2. 専有面積が77㎡と比較的広い
  3. 駅から徒歩10分の距離
  4. ブランドマンションで大型である
  5. 200万円引きするというので得な気がする

ただ、竣工から2年経っているという不人気物件を購入することに不安があるとも書いていました。

なぜ売れ残ったのかをよく考えてみる

ブランドマンションで、大型、プランも悪くない。それが1000戸もあるなら、ときに売れ残ることはありますが、戸数は300戸程度、23区内の物件としては大き過ぎるとまでは言えません。

駅から徒歩10分なら遠すぎることもないので、考えられる理由は価格が高いことですが、当該マンションの駅の相場を調べてみると決して高くないのです。

ただし、これは単純比較なので、駅からの距離と環境の違い、建物価値の差などを勘案して行くと当然ながら割高という場合もあります。

2年も売れ残っているケースで、考えられるのは、「環境が悪い」か「谷地にある」、「駅力がひどく劣る」といったことですが、見落としがちなのは環境の悪さです。

環境の悪さとは、貧民窟のような住宅が近くに並んでいるとか、駅からのアプローチが狭く混雑する道路である、国道を信号待ちしながら待つ必要があるといった立地条件の用地を買ってしまうことは大手でもあるのです。

各停しか止まらない最寄り駅に着いたとき、駅前が寂しく、しかも田舎然としているなと感じ、続いてアプローチ上に感動する要素は何もなく、退屈な徒歩10分を経てたどりついた現地周辺も狭小戸建て住宅と零細な町工場が点在するだけの何の変哲もない場所に、完成したばかりの新しいマンションが燦然と輝いています。

現地に到着すると、自宅を出るまでに抱いていた買い手の期待は既にしぼみ、購買意欲も後退しています。辛うじて思いとどまったのは、新築マンションが大きく綺麗で敷地内ガーデンなどが目についたからです。

上記は筆者のご相談物件のことでなく、過去の複数物件の感想を合わせた想像図を表現したものです。売れない理由は、このような点にあるということをお伝えしたかっただけです。

価格が安くなれば買いなのか?

200万円値引きするからどうかと言われて、後退していた意欲が盛り返すということがあります。ただ、そのくらいでいいだろうか?そんな疑問が湧いてきます。

答えを先に言うと、2年も経って完売しない物件は10%以上の値引きがなければ買わない方がいいと思います。環境が悪いとか駅から遠いとかの売れない理由も、価格が安ければ、その欠点や弱点を相殺してくれるものなので、それが2年もかかっているのは、価格が高いということでもあるのです。

言い換えると、どんな悪条件のマンションでも、価格が安ければ買おうとする人は必ず現れるものです。それが大量に現れないのは、「安くない」証左なのです。「売れない」と「高い」は表裏一体です。

では、10%以上安くなったら買ってもいいのでしょうか?答えは微妙です。なぜなら、100円の品と150円の品を将来同時期に売却したとき、前者は80円になり、後者は180円になるといったことが起こるからです。

駅から遠く環境も良くない売れ残りマンションは売却時も買い手は付きにくいので、いやでも値を下げる必要に迫られます。結局、安く買ったつもりでも売却価格は一段と下がり、残念な思いをすることになるのです。

その昔、駅から遠くても安ければ買おうとする人は大勢いたのですが、時代は変わって駅に近くないとマンションは売りづらい傾向が強まっています。インターネット上で様々な情報が流されるようになったせいでしょうか、買い手の研究が進み、駅から遠いマンションは売りづらいという認識が定着しつつあるのかもしれません。

高くても都心、高くても駅近と信じる(希望する)人が増えれば、都心・準都心の駅近マンションには「嫁1人に婿5人」状態が生まれ、駅から10分もかかる郊外マンションは、反対の「嫁5人に婿1人」となって、売れ残ることになるのです。

新築時に売れ残ってしまうようなマンションには重大な欠点、弱点があると思った方が良いのです。そのようなマンションを安値に釣られて手を出しそうになったときは、足を止めてよく考えた方が良いでしょう。買わない方が良いかもしれません。

それでも前向きな姿勢があるなら、営業誘導には乗らず、大胆な値引き額を要求しましょう。早く売りたがっている売主は、10%以上の値引きも仕方ないと覚悟しているに違いないのです。ダメで元々くらいのつもりで、チャレンジしましょう。

1月~3月は決算期を前にしてマンション業者の多くが販売促進に拍車をかけるときです。「買うから●●●万円にして」と言ってみることです。