子供のいない共働きのご夫婦からのご相談も増えている昨今ですが、共通点は「職住近接を条件として探しているが、中々良い物件に巡り会えない」というお悩みです。
この種のご相談に当職がどのようにお答えしているか、最近の共通部分のみを取り上げてみました。
1.地域を限定しないこと
現在住んでいる近辺、実家に近いなどと条件をはめて行けば行くほど選択肢は狭くなるので、ある程度幅を持たせた方がいいでしょう―――最初に申し上げるのはこの点です。
職住近接と言っても、電車なら都区内とは限りません。例えば、人気の武蔵小杉(川崎市)などは30分圏内に入ります。どの辺までが職住近接なのかは個人差があるので、ここでは範囲を特定しませんが、気を付けたいのは、外国人村は避けるべきこと、都心以外なら西側または南側がいいことをお伝えしておきたいと思います。
優しい人が多い日本でも、文化の違いからか外国人が目立つ街は嫌われる傾向があります。人口減少と人手不足の課題を克服するために外国人労働者の受け入れ制限の緩和が続くので、今後はますます外国人村が拡大することでしょう。
同胞が近所に住んでいれば何かと心強いものであるし、故郷の食材・食品を近くで買うこともできるので、外国人は固まって暮らしたがるものです。
日本国内でも、同国人だけのコミュニティが形成されている町は既にいくつか見られます。
候補物件を見に行くときは、必ず街を散策してみましょう。「○○国製品販売中」の看板を見つけたら要注意です。
2.広さにこだわらないこと
DINKSさんも、いつか子供が一人授かることを考えて、少なくとも2LDKを求めます。1LDKではすぐに手狭になるからです。
2LDKなら10年は住めます。なぜなら、1人の子供が個室を欲しがる時期は10年後(小学校4年生)あたりになるからです。もし、子宝が1人で終われば、その後も2LDKで住み続けられることでしょう。
しかし、2人目の子が1年か2年遅れで生まれれば、11年か12年後かには3LDKが必要になります。そのことは、生まれたときからわかっているわけですから、1人目の子供に個室を与えるころになったら、3LDKへの住み替え作戦をスタートさせればいいのです。
つまり、最初から3LDKを狙わない方が良いというのが、筆者の考えです。なぜなら、予算に限りがある以上、広さを求めてしまうと、好ましくないエリア、または好ましくない条件のマンションを選択せざるを得ないからです。
広さを、例えば55㎡くらいに妥協すれば、良い立地に良い物件を購入できる確率が高くなるのです。
3.築20年までは許容すること
新築の方がいい、中古でも築浅の方がいいと考えがちです。ところが、そのタガをはめると選択肢が狭くなって良い物件を逃してしまいます。
極端な例では、新築を上回る優良中古もあります。
しかし、古いだけに価格は高くない、それでいて中古同士の比較では高値の物件があります。 例えば、築8年で5000万円の物件があるとき、その近辺で築18年なのに同じ広さで5000万円)といった一見割高な物件があります。
狙うべきは、古い方(後者)です。
欲張りが過ぎて高値で売り出すオーナーもいるので、その点には注意が必要なものの、古い割に高い物件は、市場がそう評価する良いマンションなのです。
そうかといって、築35年とか40年などは避けた方がいいでしょう。昔のマンションは最近のマンションには及ばない部分が少なくないからですし、40年マンションは旧耐震基準の耐震性で問題があるかもしれないからです。
まあ、絶対ではありませんが、無難なのは築20年までと線を引いておいたらよいと思います。
4.妥協は不可欠
どんな物件を見つけても、どこか気にいらないところがあるものです。パーフェクトな品はないのです。ゆえに、気に入らない部分があっても、自分なりの優先順位を決めておいて、後順位は捨てる・我慢するといった態度が不可欠です。
ただ、資産性を軽視しないならば、これだけは妥協しないこととして、駅から遠い物件は避けるべきと進言します。
「何分までなら大丈夫か」とよく問われるので、補足しておきますが、5分以内が大事です。
10分以内と線を引いている人を多数見ますが、これは危険です。5分を超えても大丈夫なのはビッグターミナル、例えば渋谷、新宿、恵比寿、目黒、品川、池袋、中野、武蔵小杉、吉祥寺、横浜といった駅です。
ビッグターミナルとは言えない駅でも、中目黒や自由が丘なら5分超えても問題ないでしょう。 職住近接という条件は個人差があるとはいえ、郊外に分類される駅になると、5分でも将来はどうかと疑問を抱くのです。
5.都心のマンションはどれでも大けがはないが・・・
多くの買い手が悩むのは、それぞれの物件に強いインパクトがないからです。
例えば、駅から1分・2分という特徴があるわけでない、30階建てのタワーマンションでもない、300戸の大規模マンションでもない、目の前に公園があるとか、スーパーマーケットが隣にあるというわけでもない、部屋からの眺望が美しいというわけでもないからです。
いわば「可もなく不可もなし」のマンションというとき、予算も広さも駅からの距離もみな合格点にあるので切り捨てられないで悩むのです。
このようなマンションでも、都心または都心から5㎞程度の立地にある場合、リセールで大けがすることはないのです。
固有の条件をつぶさに調べれば、10人のうち7人は嫌うであろうから、それがネックで価格に下方圧力がかかるだろうという物件、その条件は気になる要素だが、10人のうち5人は問題にしないので、価格が下がりやすいことにはならないだろうと思われる物件など、筆者の見立てで差は付きますが、価格差が2割も3割も開くことはないのです。
場所を都心・準都心に区切って述べたのは、それだけ都心・準都心の需要ボリュームは大きいからです。
6.中古ならプチリフォームを楽しむこと
綺麗な家、設備のいい家に住みたい。日本人共通の願望ですが、特に女性は新築にこだわりが強い感じがします。
中古になると、部屋を見た瞬間に「汚いなあ」と興ざめしたりもするのでしょう。そこは見学前から覚悟しておくことが大事かもしれません。
ともあれ、中古はリフォームが不可欠になります。しかし、リノベーションしようなどと大掛かりなリフォームは考えない方がいいでしょう。金額が大き過ぎるからです。度々重なる打ち合わせに時間も取られるし、費やすエネルギーも半端ではありません。
ようやく満足するプランができて工事に入っても、完成したときの失望感が大きいことも多いのです。 PC上で完成イメージを瞬間的に映し出すシステムもありますが、実物とのギャップは小さくありません。お金と時間をかけた割には出来上がりに不満を漏らす人が多いのです。
筆者のお勧めは「プチ・リフォーム」です。例えば、入居前はガスコンロとトイレだけ新品に交換し、壁紙もトイレの1面だけ、さらに欲張って玄関ホールの壁にボーダーの木パネルを張り付ける程度に留めるといったことです。
1年経ったら今度は寝室の壁紙を高級感のある布クロスにする、3年目はリビングの一角にミセスカウンターを取り付けるといった、分割リフォームを計画するのがお勧めです。
程度問題ですが、中古物件の中に「きれいに使ってきたお宅」をときどき出会うことがあります。 リフォームが要らないと思える物件も少なくないのです。
しかし、築20年などになると、さすがに部分的なリフォームは必須です。
リクルート社の調査データなどを覗くと、年数に比例して費用がかさむようですが、それを一遍にやってしまうのではなく、発想を替えて購入時は最小限に抑え、後の楽しみに残すことをお勧めします・・・・・マイホームの楽しみは、賃貸では許されない室内のお化粧や模様替えにもあるのですから。