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目が肥えすぎて決められない人

三井健太
三井健太

たくさんの物件名が会話に出て来る人があります。毎週のように見て歩くという感じで、物件にはとても詳しい。お話を伺っていると、殆どモデルルームの見学マニアで、半ば趣味のようになっている人たちです。

中古物件も何件と多数見ている人もあります。

これらの行動は目を肥やすために始めたもので、関心はあるが買う気はないのか、良ければ購入したいという気持ちがあって見学に行ったものの難点があって決められず、結局いつも同じ結果を繰り返しているためのようです。

そのあたりの正確な事情は分かりませんが、筆者の勘では「いつまでも買わない・買えない人」です。

マンション選びで気を付けたいことは?

筆者の変わらぬ主張は、下手なものを選ぶと10年先に後悔するから「資産性の観点」を念頭に置きつつ「より換金価値の高い」マンションを選ぶようにした方がいいというものです。

例えば、駅から遠いマンションを環境がよいというだけで選んでしまうと、リセールバリューが低くなってしまう。言い換えれば、売却時にキャッシュがほとんど残らなかったり、下手すればローン残債の清算のために手出しが必要になったりするからです。

見学マニアさんは、資産性に疑問があって見送りを繰り返しているようでもないのです。あれが気に入らない・ここがダメだの「ダメ出しばかり」をしているように思います。

それら見送り物件の中には、あとで「あれは良かったよね」「でも価格が高かった」などと夫婦で会話を交わすようです。

つまり、見学した物件の中から、「どれかを買っておけばよかったのに」、そんなふうに後悔している人がいるのです。 

ご相談者の中には、買い替えの人もありますが、比較的上等なマンションに住んでいるにも関わらず買い替えを考えているのだと言います。

理由の多くは、手狭になったからですが、それすらも一般的な基準では狭くなさそうなのです。会話してみると、「より高みを望む人」だと分かります。

購入体験済みの人だけに、マンションの良し悪し、居住マンションへの不満、問題点などを認識しています。次に買うマンションは「もっと良いマンションを」と高みを目指します

初めて購入する人も、理想を求めているという点では目の肥えてしまった人かもしれません。しかし、どちらもゴールに達することはない。そんな気がします。現に、5年前から探しているという相談者もありますし、2年前から探しているが中々決まらず、疲れたと語る人もあるのです。

目を肥やすことは必要ですが、下手に見て歩くと理想ばかり追いかけてしまうことになりかねません。 パーフェクトはないのです。それを指摘すると「分かっています」と言います。しかし、適当なところで妥協するのは嫌だとも言います。

だから今日も見学に歩くというわけです。堂々巡りでいつまでも決められない。筆者の目の前で夫婦喧嘩を始めてしまう人すらありました。

こうした人たちには、親でも兄弟でもない筆者が意見を述べたところで効き目はないのかもしれません。あとで知るのですが、結局、「えっ、あれを買ったのですか?」と、筆者が思わず口にしたくなる不思議な選択をしてしまう人もあります。

担当営業マンに取り込まれてしまったのか、誰かの意見に従ったのか、知る由もないのですが、人の価値観は千差万別です。

資産性の視点を優先させたい

筆者がメールであれ、面談だけであれ年間にご相談させていただく(物件の評価レポートをお届けする)人は、年平均400人です。

1年間でマンションを購入する人は新築・中古合わせて7万人もいる首都圏のこと、その1%にも満たないのです。筆者の貢献度などたかがしれています。

しかし、一人でも多く、お役に立ちたいと年中無休、1日15時間態勢で奮闘しています。ご縁があれば、そこはこうした方がいい、こう考えてはどうか、その選択は感心しないなどと進言・助言ができます。

他人の意見など要らないという考えの人も、このブログを読んでくださっているなら、「あまり考え過ぎず、衝動的に買っても間違いない」ことをお伝えしておきましょう。

世の中には「知らない方が幸福」という場合もあるのです。マンション購入も、そんなものだと思って買いました。十分満足しています。そう感想を述べる人もいます。

ブログで発信してきたのは、資産性です。他人の筆者が個人の事情や趣味嗜好に踏み込んで選択のお手伝いをするなどというのは傲慢すぎるので、「他人目線で客観的に価値あるマンションかどうか、すなわちリセールバリューはどうか」に視点を置いています。

そのためか「辛口批評」になりがちですが、その方が後年、きっと感謝されるはずだという信念があるからです。

筆者のマンション評価サービスは、どちらかと言えば、「マンション購入の迷いを解いて決断の後押しすること」にあります。従って、「ダメ出し」は控え目にし、枝葉末節の部分は大らかに見ようと努めています。

その過程で、評価した結果を淡々と伝えるだけでいいか、このマンションはやめた方がいいと踏みこんで言うべきか、あるいは立地条件に少々問題がある気がするが、「現地を見ていないので」と曖昧なコメントで逃げるべきか、立地に問題はあっても購入する価値はあるという理由をコメントすべきか等々、表現方法にひとしきり悩むのが常です。

客観的、かつ具体的に所見を述べることをモットーとしています。しかしながら、言葉選びを誤れば相談者の感情を害することもあるでしょうし、購買意欲を一気に冷ましてしまうこともあるでしょう。 それが良い場合もありますが、購買意欲が一層盛り上がるように言ってあげた方が良い人だってあるはずです。

単に評価ポイントを出し、短所・欠点ばかりを重箱の隅をつつくように探して「ダメ出し」レポートをお届けしても、このサービスの価値はないと考えているからです。

とはいえ、言葉足らずであるかもかもしれません。あるいは、言葉の選択を誤り、依頼者の逆鱗に触れることになるかもしれません。

・・・・以上のような気遣いをしているつもりではあるのですが、それがストレートに伝わっているかは自信がありません。

回りくどい話になってしまったかもしれませんが、「目を肥やし過ぎない方がいい」、「見過ぎはかえって仇になる・衝動的に買ってもいい」ことをお伝えしたいのです。

目を肥やし過ぎで決められない人になりかかっている人に強くアピールしたいからでもあります。

知らないほうが幸せということもあるにはあるが

昔の女性の中には「18でお嫁に来ました。世間のことをよく知らず、交際期間も短かいまま結婚しました。でも何十年と過ごして来て幸せでした」。そう語る人がいます。

何も知らないうちに親の勧める縁談を受け入れて良かった人たちです。マンション選びにも通じるのではないかと思います。目を肥やし過ぎ、見学し過ぎはときに災いとなります

何事も「過ぎたるは及ばざるが如し」というではありませんか? 

自ら罠にはまってしまうことに気づかない人もある。筆者は感じます。昨日こんなお便りをいただきました。

(個人を特定できないよう、筆者が一部削除、加筆しています)

「文書によるレポートがあるお蔭で、日々薄れていくアドバイスの記憶を自分の都合の良いように捻じ曲げていく、という間違いから救ってくれることに気付きました。実際、ご相談後少し時間が経つと、また迷いが出たり、あらぬ方向に行きそうにもなったりしましたが、レポートを読み返すことで軌道を戻すことができました」。

どんなに優秀な人でも、人間は間違いをしたり、感情が理性に勝ってしまったりするものです。目を肥やしているつもりの行動があだとなる場合もあることを知ってほしいと思います。

筆者の使命は、「よく考えずに決断してもいい、その代わりこれだけは気をつけてね」と、縁談における親の立場にあるかのように、「マンション選びの原理原則」をお伝えすることと考えます。

「自分が気に入ったなら、それでいい」ではなく、「それを選ぶと、きっとこうなる。それでもいいのだね」を具体的にお伝えしてきました。

今後も、「手を変え、品を変えしながら」マンション選びの際の留意点、売却の際の留意点を発信し続けようと思います。

個別のご相談では、迷い・悩みを整理して解決します。初期段階にある人には、方向付け・指針をお話ししようと思います。