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再び登場のコンパクトマンション

三井健太
三井健太

最近、何故かコンパクトマンションの評価依頼が続きました。一時遠ざかったかのように感じていたコンパクトマンションですが、新規開発が増えているかもしれない。そんな感想を抱きました。

今日は、コンパクトマンションの世界について、整理してみました。

管理人とマンション

管理の良いマンションは、入居者間のコミュニケーションも良いものです。互いに他人の子供に注意・指導しても問題が起きないような良好な関係が出来上がっていたりします。

この意識が欠落し、管理会社任せにしてある巡回管理のマンションは、寿命が縮むと思って間違いないのです。1日に数か所を巡回するだけの巡回管理員では、どうしても見逃してしまうところが多くなります。

24時間警備やコールセンターなどは、本来の資産管理という観点からは無関係なものと言って差し支えないでしょう。

綺麗なマンションは高く売れますが、汚れた印象が強いマンションは見学者が失望し、購入に踏みきらないかもしれません。そうなれば、売却価格を下げざるを得ません。つまり、共用部の汚れ、見栄えの悪さは資産価値の低下につながるのです。

電灯切れのような、目視ですぐ分かるようなことより、ちょっとした補修個所、例えば鉄部の錆びや植栽の枯れ、外壁の亀裂、タイルの剥離などを目ざとく発見することが建物の劣化を防ぐ管理人の大切な仕事なのですが、これが巡回管理の場合はおろそかになるのを否定できません。

特に、外壁の亀裂は毛細血管のような細いすき間に雨水が浸透して内部の鉄筋を腐食させます。鉄筋が錆びると膨張して爆裂を起こす原因となります。こうした劣化が進めば、気付いたときには多額の修繕費用が発生する事態になりかねません。

そこまで行かないまでも、人の顔にできるシミやソバカスと同じく、放置すれば老化現象が目立つようになるのです。

また、自転車置き場やゴミステーションの整理整頓、共用部のゴミ拾いなども、「綺麗にする」という観点から管理人の重要な仕事です。

綺麗な廊下にはゴミは落としにくい

初めから綺麗な場所にはゴミをポイ捨てしにくい。これは人間心理です。マンションの共用部もそうです。ホテルのエントランスやロビー、廊下などのように、いつも綺麗な状態のマンションは汚れにくいものですが、その反対のマンションは汚れ方が加速しがちです。

巡回管理のマンションには、劣化が早まる危険があると覚悟しなければなりません。

静かな住宅街にあり緑の環境が気に入って購入した「低層の小型マンション」、駅前の便利さに惚れて買った「ペンシルビル状の高層少戸数マンション」、こうしたマンションを選択した人は、入居後の管理に並々ならぬ関心を払い続けることが大事です。

それも、自分一人ではだめで他の多くの住人とともに自分の資産を守る意識を高く持ち続け、自ら活動することも必須と言ってよいでしょう。あるいは、管理費を値上げしてでも管理人を少なくとも半日以上は定置させる契約を管理会社と結ぶべきです。

こうしたことが面倒と思う人や、管理費の値上げの合意を取りつけるのは難しいと思うなら、巡回管理のマンションは避けるべきです。

最初に管理人がいない「巡回管理」の話をしたのは、マンションの管理は資産価値を維持する、言い換えるとリセールバリューを気にするならば最も大事な要件だからです。その観点からコンパクトマンションを見ると、巡回管理になっている例が多いためです。

コンパクトマンション企画の業界事情

コンパクトマンションの管理はなぜ巡回方式が多いのでしょうか?その事情や背景に迫ってみようと思います。

デベロッパー各社は、あるときコンパクトマンションの需要が少数派とは言えないボリュームに拡大し、無視できないことに気付きました。

広い敷地が入手できれば、中心需要であるファミリーマンション向けの商品を企画するのが普通です。ただ、広くてマンション建設に向く用地を取得することは、実は簡単なことではありません。たまに売地情報があっても、競争は激しく入札になることも多いので買収額はいやおうなく高くなってしまいます。

一方、比較的争奪戦の対象になりにくいのが狭い土地です。都心で駅に近いなどの条件はあるものの、取得しやすいのです。

広い面積のマンション用地がないから仕方ないね。狭小用地でも買って、コンパクトマンションでも造るか。そんな消極的な姿勢でコンパクトマンションの開発に取り組むことが多いのです。

動機は不純でも、ニーズがあると気付いたマンション業界は、一時、盛んに供給を増やしました。

タワーマンションの下層階にずらりとコンパクト住戸を並べたり、駅前の商業地域などの狭小敷地を取得して全住戸コンパクトタイプにしたりと、競い合うように販売しました。

コンパクトマンションは、狭い敷地に建てられた小規模で、全室コンパクトというタイプ(オールコンパクト)と、中規模以上のマンションの一部に設けたタイプがあります。このうち、前者のタイプに問題が多いので、この記事は「オールコンパクト」について書いています。

オールコンパクトのマンションは狭小敷地で企画されましたが、回転が速く、リスクの少ない商品だと、業界各社は考えていた節があります。

大規模マンションは開発期間が長く、土地を仕入れてから販売にかけるまで2年、3年とかかりますが、小規模マンションは開発期間が短くて済むのです。許認可が比較的簡単に降りることに加えて、商業地であれば、日照権問題などで近隣住民と争いになることも少ないからです。

また、日当たりや見晴らし、環境などの条件もファミリータイプのマンションよりずっと緩やかです。単身者は、昼間はいないので、北向きでも一向に構わないわけです。寝るためだけの家という発想で商品化が進められました。

間取りも、ファミリータイプほどバリエーションを設けたり、採光を気にしたりする必要もないので設計時間も短くすんだのです。

コンパクトマンションは割高商品

コンパクトマンションは、土地代が競争で吊り上がらないにも関わらず、価格は高くなるケースが多いのです。その理由は、次の二つです。

①コンパクトマンションは建築コストが高くつく

説明を平易にするため、70㎡のファミリータイプと35㎡のコンパクトマンションとで比較してみましょう。

70㎡タイプ1戸を35㎡2戸に切り分けたら、玄関ドアもバスもトイレも、また排水管も、また給湯器やメーター類も35㎡タイプの方が2倍必要です。グレードが違うので、単純にコストが2倍になるわけではないですが、高くつくのは確かです。

②敷地が狭いと工事がしにくいので施工費は高くつく

また、狭小敷地での施工は何かと不自由で、例えば重機やコンクリートミキサー車も敷地内に入れず、敷地の外から(公道を塞いで)使うことになり、資材置き場も工事事務所も敷地外で借りることになります。

このように、コンパクトマンションは建築コストが高くなってしまいがちです。よって、販売単価はどうしても高くなります。結局、同一エリアの平均的なファミリーマンションの坪単価が@300万円であるとき、コンパクトマンションは@350万円とか@400万円などとなってしまうのです。

オールコンパクトマンションは小型ゆえに付加価値がない

大規模マンションは、その規模が差別化に役立っています。大きいだけで存在感があるからです。

反対に、オールコンパクトマンションは駅前通りなどの便利な場所に建つことが多いのですが、小型であるゆえに目立たない、いわば周囲の建物に圧倒され埋没してしまいます。

存在感の有無は資産価値にも影響します。

また、エントランスやロビーといった共用部分の規模も、全体スケールに比例して小さくなるオールコンパクトマンションは、その面でも「立派・豪華」から遠いものとなります。それが資産価値に与えるマイナス点であることは言うまでもないでしょう。

間取りの悪いコンパクトマンションが多い

付加価値がないなら、せめて間取りだけでもしっかりしたものを選びたいものです。

左のタイプは33㎡、右は36㎡と少し差はありますが、スパンが広くて寝室もリビングダイニングも、ともにバルコニーに面して窓が付く方が良いのは言うまでもありません。

さらに工夫を重ねると、次のような間取りもできるのです。

キッチンを独立型にしたのが特徴的です。洗面台下部に洗濯機を組み込んで効率的で美しいパウダールームを実現しました。玄関のシューズインクローゼットをはじめ、収納にも配慮していますし、寝室は扉をフルオープンにできるという、秀逸な1LDKプランと言えましょう。

角部屋比率が高いというキャッチフレーズには注意したい

マンションの共用廊下は開放型の外廊下式と閉鎖的な内廊下方式があります。後者は、しばしば「ホテルライクな」とか「ホテル仕様」などと形容されます。外廊下より内廊下式の方がグレードは高そうです。

内廊下式のマンションは、下図のような全戸が角部屋になることも多く、「多面採光」をセールスポイントに掲げて購買意欲を掻き立てようとします。

ここに落とし穴があります。1フロアに3戸しかないということは、10層でも30戸しかない小規模マンションであることを語っているのです。

小規模マンションは街並みに埋もれてしまったり、規模の大きな建物の陰に隠れてしまったりします。誇らしいマンションとは言えないはずです。

それでも、駅まで2~3分といった利便性が高いとか、管理人が短くとも1日8時間滞在して各種サービスに当たっている、外観デザインが個性的であるとか、玄関周りが小さいながらも豪華にできているといった長所が弱点を相殺してくれるならいいのです。

オールコンパクトマンションは管理費が高くなる

オールコンパクトで100戸もある大型というのは殆んど見られません。大きくてもせいぜい50戸程度で、大抵は30戸くらいの小型物件が多いのです。50戸と言っても、コンパクト住戸ばかりですから、ファミリーマンションの20~30戸規模と同じくらいです。

規模が小さいと管理費が割高になるものです。管理費が高いと売りにくいと見る売主は、管理人を置かない管理体制(巡回管理)にして販売を行います。

管理人がいないマンションは将来どうなって行くのでしょうか?そこに思いを馳せる買い手も少なくはないのですが、数十年先を想像できる人はいないのでしょう。

管理費が高くなっても管理体制がしっかりしている方がいいでしょうか?筆者の調べでは、売れれば何でもいいといった無責任なデベロッパーも相変わらずありますが、そんな業者も管理費が安いのは購入者にとってもメリットがあるからと信じている節もあるのです。

対して、大手デベロッパーに多いのですが、長い目で管理の重要性を意識し、管理体制が一般マンション並みにしている事例があります。これには、好感を持てます。

大手マンション業者に聞きました。「コンパクトマンションは、単価は確かに高くなりますが、1件あたりは30㎡か40㎡なので、10,000円から15,000円と抵抗感が小さいように思います」という説明でした。

30㎡未満のワンルーム混在でない方が望ましい

ワンルームマンションは投資家が購入して最初から賃貸に出すというパターンになります。賃借人は若者も多く、ルール破りの居住者がはびこることになりかねません。自分がオーナーでないこともあって、維持管理に協力しようなどという意識は毛頭ありません。

これを放置すれば、マンションは徐々に荒れ果てていきます。そこを番人たる管理人が目を光らせ注意する体制が必須になるのです。

ただ、若者は怖いためか、注意できない管理人も近頃は増えて、張り紙でお茶を濁すことが多いそうです。

賃貸住戸は、一般のファミリーマンションでも、時間が経てば必ず出て来ますが、コンパクトマンションは新築の時から何%かが賃貸されるものです。

その比率が多いほど、賃借人が幅を利かすのです。つまり、オーナーなのに、肩身の狭い思いをしながら暮らすことになりかねません。

その意味でも、ワンルームタイプ(30㎡未満)の比率が高い物件は避けた方がいいのです。


コンパクトマンションを買うなら、コンパクトマンション同士の比較をしつつ、できるだけ付加価値のある物件・規模の大きい物件、ワンルームの少ない物件を選択した方が良いと言えます。