湾岸エリアのトレンド情報やコラムをお届け 湾岸マンションラボ

湾岸マンション
価格ナビ

新築は諦めた方がいいかもしれない

三井健太
三井健太
三井健太コラム

日頃からマンション購入を検討している人たち、または売却を考えている人たちはマーケットの動向に関心を持ち、ネット上に限らず雑誌や新聞のコラムと分析記事に目を通しているに違いありませんが、これら情報には誤解を招きかねないものが少なくないようです。

投資家の動きと実需

先日もたまたま目にしたテレビ番組で、有名な不動産マーケットのアナリストのコメントに違和感を覚えました。

コメントが間違いというのではありません、しかし、そのコメントは中古マンションの市場を投資家目線で分析したものなのです。

それにも関わらず、新築マンションの全体データを援用して解説しているので、これでは一般視聴者(マンションを買いたい一般サラーマンなど)を誤解させ混乱に陥れるだろうなと思わざるを得なかったのです。

投資家が一斉に売却に動けば中古マンション市場に売り物があふれ、買い手市場となって価格が下がるというのは理屈ですが、マンションのマーケットは実需が主体なのです。株とは違います。思惑で大きな値動きをすることはありません。

例外的に、過去に投資家の動きが市場を混乱に陥れたことがありました。バブル期の数年間のことです。しかし、この頃は不動産業者が「にわか投資家」になって土地ころがし、マンションころがしに走っていたちきで、その行動に加担したのが全国の多数の金融機関でした。

結果的に、地価もマンション価格も急上昇しました。やがて、当局も動き、超短期売買の利益に「重加算税」を課し、ほどなく土地・マンション転がしは消滅しました。

今は当局の目も厳しく、バブルが巨大になる素地はありません。一部の投資家の狭い市場の売買だけと言って過言ではありません。一部に外国人のも登場しましたが、その中心だった中国人は、資金の国外持ち出しを規制されたことあり、一時の過熱感はなくなりました。

最近は、内外ともに投資家の買いの圧力は弱まっています。

売却の方も、専門家から発信される分析を信じて増える可能性はあるかもしれませんが、そのパワーはマーケット全体を大きく揺るがすには至らないと言えそうです。

投資対象として中心を為す東京23区だけに絞っても、中古マンションの年間取引件数は3万もあります。その中に占める投資家の割合はいったいいくらあるというのでしょうか。

市場に与えるパワーがゼロとは言いませんが、都心のタワーマンション、駅前マンションなど特別なものだけではないかと思います。

投資市場だけのデータがあるわけではないので、推測の域を出ませんが、圧倒的に一般個人の自宅の売買が中古マンション市場の中心・主体なのです。ゆえに、影響がゼロとは言いませんが、投資家の動きに神経をとがらすことはないと考えます。

仮に、中古の値下がり傾向が数字に表れたり、断片的な現象を報じられて口コミとなって市場に広がったりすれば、中古マンション価格に下落圧力が加わり、買い手から見たら結構なことですが、そうなることを期待していいものでしょうか?

筆者に、そう聞いてくる人がときどき表れますが、筆者は「待っていれば安く買えるという見方は疑問です。そんなことを研究するより、いかに価値あるマンションを選択するかの研究を優先した方が賢明ですよ」と答えることにしています。

マンション市場は、新築と中古、実需と投資という分け方をして語らなければなりません。また、一般ファミリーマンションとワンルームマンションも区分して論じることが必要です。

新築マンションの価格は?

新築マンションは売れないから値下げしようということはあっても、そもそも利幅が狭いので大きく下がることはないのです。マンションの分譲業者は、その事業で利益を上げ、企業として成り立っているのです。利潤を削るのは限界があります。

利幅が50%もあれば別ですが、粗利で20%しかない業態なのです。そこから販売経費(モデルルーム建設費や広告費、販売手数料、借入金利など)を引いたプロジェクト利益は10%程度です。その利益で本店経費を賄って企業は経営が成り立つのです。

従って、10%下げたら赤字プロジェクトになってしまいます。そうなるくらいなら分譲はしないで塩漬けにした方がいい。そう判断することもあります。土地は腐らないからです。

価格が上がったことによって、売れ行きが悪化しても値下がりしない理由はここにあります。

土地は2年も前に買ってしまったので、今さら原価を下げることはできませんが、建築許可を取って、いよいよ着工という段階に至ったとき、建築費が下がってくれたら原価は下がり、売り値を下げることは可能になります。

しかし、建築費も下がる様子は全くないのです。土地代と建築費の2大原価が高ければ(下がらなければ)新築マンションの価格が下がることはありません。

建築費を下げる方法はないのか?そういう疑問を持った人もあるかもしれませんが、デベロッパーは昔からコストとの戦いに知恵を絞ってきた歴史を持ちます。どうすれば下げられるかはよく知っていて一部を既に実行済みなのです。

今日は割愛しますが、前回(2000年前後)の価格急騰期に対策を講じて下げることに成功していますが、下がったのは5%程度でした。

今回の急騰局面では、既にその策を使い果たしているのです。それでも価格上昇を止めることができなかったのです。土地代も建築費も下がらなかったからです。 従って、今後も値下がりする余地は極めて小さいと考えるほかありません。

勿論、品質をもう一段下げる決断をするなら別ですが、これ以上の下げは買い手のニーズに合わない、つまり、粗悪なマンションを買えというに等しいからです。

そのような態度に転換することはないと信じたいですが、一部の地域・物件では粗悪品が出て来る可能性も否定できません。

グレードの高い物件のモデルルームを見慣れていない「うぶな検討客」、「住んでいる賃貸アパートに比べたらはるかにグレードの高い分譲マンションと感じてくれる買い手もあるのだから」と、己に言い聞かせつつ、品質を低下させた物件を創るデべロッパーも現れるかもしれません。

都心や準都心あるいは、郊外でも人気の高い街の、そもそも高値地域のマンションは、一定ラインを超えてグレードダウンになることはないと思いますが、その他の地域では注意したいところです。

新築を買うなら売れ残り

新築を買うなら、売れ残りを狙うのが賢明です。このことは数年前から筆者が提案してきたことです。

分譲業者にとって、販売開始時の価格は企業の存続のために粗利益20%を目論んでも売り出して1年、そろそろ建物竣工という時期に例えば3分の1が売れ残ったとして、それを全部10%引きしても、それまでに販売した半数が値引きなしで売れているなら、トータルでは利益は確保できるのです。仮に20%の売れ残りを20%引きしてしまってもトータルでは16%の利益が残る勘定です。

つまり、最後は「背に腹は代えられない」とばかりに、20%は無理としても、10%の値引きを要求したとき、売主はこれを受け入れる可能性はあるのです。

筆者は、新築の売れ残りを値引きさせて買うか中古を選ぶべきと何度も主張してきました。今も変わりません。

加えて、「新築は諦めた方がいいかも」と言いたいのです。理由は新築マンションの販売戸数が激減していること、今後も増えそうにないからです。

年間のマンション需要は首都圏全体で年間に4~5万戸はあると考えられますが、供給戸数は実績で3万か3.5万しかなく、毎年1万人があぶれてしまう状況が続いているのです。数だけならまだしも、希望条件とのミスマッチ状態も顕著です。

ミスマッチは、立地条件の問題、予算と価格の問題です。あぶれた人は、中古を選ぶかしかないのです。