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都心をやめて都下を選ぶ選択の是非

三井健太
三井健太

都心で探すと、なかなかこれという物件に出会えません。都心にこだわらず、同価格帯でも面積の広い物件が買える東京都下、その他の郊外も選択肢ではと思いますが、悩ましいところです―――こんなお便りをときどき頂きます。先日も、埼玉県でも浦和ならいいのではないか?そんなお尋ね・ご相談がありました。

今日は、郊外で検討するときの留意点についてお話ししようと思います。

郊外マンションを選ぶ理由がある

この数年に限って、郊外マンションで評判になったものを思い返すと、最寄り駅からバス利用の一戸建てに住むシニア層の購入が目立った物件が記憶に残っています。

府中、調布、国分寺、三鷹、立川、八王子、多摩センター、柏、といった駅名が浮かんで来ます。

シニア層の購買力は高く、信じられないほど高い駅前マンションを迷いなく買ってしまうようです。高値でもニーズと一致する物件だったからでしょう。

どのようなニーズかを探って行くと、所有する一戸建てを持て余していることが背景にあるようです。子供が独立し、たまに遊びに来ることはあっても、大き過ぎる家は要らないのです。しかも、階段の上り下りがつらいので、滅多に2階に上がることもないと聞きます。買い物も不便なので、小さな家でいいから、行動しやすい駅前マンションに住み替えたい――このような思いが以前からあったというのです。

一戸建ての自宅には、もう住宅ローンの残債はありませんし、金融資産も少なくないシニアにとって、老後の新しい出発にかけるマンション購入費はさほど抵抗がないのでしょう。永住するつもりで買うので、その先のリセールバリューなども頭にないのかもしれません。

この種のシニアから筆者に相談が来ることは少ないので、全部のケースを語ることはできませんが、地方都市で定年を迎えたサラリーマン氏からの評価依頼によって断片が分かってきます。

抵抗ない金額であれば、それが割高であっても気にしないのです。気にする人の依頼は、「子供に負の遺産を渡したくないから」という動機がある程度です。 マンションは売らなければ損も得もありません。若い階層は、転勤がない職場にいたとしても資産価値を気にする人が多いのとは対照的です。

千葉県の郊外にあるニュータウンの最寄り駅で買いたいという新婚さんがありました。都心から見て、なぜそんな郊外マンションに興味があるのかと訝しく思っていると、ほどなく理由が分かりました。その先の郊外都市に職場があるのです。

新婚時から4LDK100㎡の邸宅を買おうとしていました。それでも、どこかに違和感があったのか、筆者に評価依頼と、将来価格の予測を依頼して来たというわけです。結局、その人は、100㎡が80㎡にしただけで、その郊外マンションを買ったのです。

筆者のコメントは手厳しいものでしたが、新婚カップルは資産性より居住性を重視して決断したということかもしれません。

40歳前の公務員で、確か千葉県庁か千葉市役所に勤務していた人で、通勤時間が短いエリアに一戸建てが購入可能な人にお目にかかったこともありました。一戸建ても考えたが、夫婦とも外出の機会が多いので、戸締りや火災の心配などを考慮すると、マンションの方が安全という結論になったというのです。

あとは、どのマンションにするか、それだけが残っていて、千葉駅から2つくらい先に行った駅前のマンションか、千葉市中央区のマンションかが迷うポイントでした。

最後の事例は、東京都心に職場を持つ独身のOLさんの話です。都心からドア・ツー・ドアで優に1時間はかかる郊外マンションについて評価依頼をしてきたことがありました。依頼文には母親が近くに住んでいることを含めての事情と、それまでの経緯が記してありました。

ご紹介した事例は、いずれも最初から郊外都市でマンションを選んだ人達の必然の理由です。それぞれが居住性を考えた結果の選択と言えます。

郊外には換金価値の高くないマンションが多いものの、売却時までの生活を重視した結果、その間が幸せだったら、売却時のキャッシュが少なかったとしても後悔はないはずです。

問題は、都心に近いエリアに欲しいのに予算から追っていくうちに、遠くへ来てしまった人の場合です。

思えば遠くへ来たものだ

住宅選びには大抵「地縁性」がついて回ります。学生時代、この辺りに住んでいたとか、友人のアパートがこの辺りにあって遊びに来たことがある、会社までこの電車をいつも利用している、妻の実家がこの鉄道の奥にある、田舎に帰るとき新幹線の利用がしやすい駅だから等々。

そんな親近感や慣れもあって、抵抗なく選べる郊外都市はあるものです。同じ沿線なら、都心と逆方向であっても、選んでしまう駅があっても不思議ではありません。

また、資産性のこと気にしている人でも、人気のある〇〇駅だから、駅からの距離はあっても資産価値は期待できると考え、選ぼうとしている人もあります。

筆者は、「そんな遠くはダメです」と叫んでしまいそうになります。筆者も訳あって、遠くの街の一戸建てに住んでいたことがありますが、売却するとなれば、資産価値はゼロに近いと踏んでいます。

脱線しそうになりました。郊外の駅、またはバス便マンションを選びそうになったら、ちょっと止まって足元を見つめましょう。ここまで来てしまった原因は何だろうと。

疑問(1)・・・広さにこだわっているからではないのか

疑問(2)・・・新築にこだわっているからではないのか

もう一度、マンション購入の原点に立ち帰ってみましょう。見つめ直すのです。

郊外で狙うべきマンションは? 

懸命な読者は既に何度も反芻し、十分な検討を加えていることと思います。筆者が何十回も繰り返し書いてきた資産性の観点からも検討した結果だから、これでいい。そう思われる方には何も助言することはありません。

しかし、第三者の冷徹な意見というものは馬鹿にはできません。繰り返し発信してきたのも、古い記事を遡って読む人は少ないようで、仮に読んでいたとしても筆者の文章力が足りずに十分なご理解を得られていないかもしれません。

ともあれ、郊外で選ぶときは、何をおいても駅近にしましょう。都心のマンションには、駅近エリアの環境は悪いものですが、郊外都市は駅前に賑わいがあっても3分も歩けば環境が良い住宅地になっています。そうであれば、駅近の条件を5分以内などと定めればいいのです。

都心通勤者の中で郊外を選択するほかない人はせめて駅近マンションにしましょう。

遠距離(長時間)電車に乗って帰宅しても、駅に着いたらあと2分か3分歩くだけ、これなら受忍できるはずです。

資産性の観点でも、その町一番、その駅一番を選ぶことが重要です。郊外は年々マンション需要が減っていきます。売りたいマンションが5つあっても、買いたい人は1人という状態になってしまうのです。

ゆえに、最も競争力の高い町一番のマンション、すなわち「ミス〇〇町」に選ばれるようなマンションがいいのです。

人口減少時代が確実にやってきます。既に郊外マンションは買い手がつきにくい状況にあります。郊外都市の中には、空き家問題が既に顕在化しています。一戸建てだけではなく、マンションもジワリと表面化しつつある実態について耳にします。

マンションは管理費・修繕積立金の滞納問題につながりかねないので、空き家問題は他人事でなくなります。ときどき届く郊外マンションの中古の評価依頼によって、筆者の立場でも知り得る「管理費等の滞納例」を見ると、巨額なものもあることに驚かされています。

郊外マンションの検討に当たっては念には念を入れたいところです。