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選択肢を広げるという考え方

三井健太
三井健太

前回の記事は若いカップル(子供はいても幼児が1人)をイメージして書いたもので「70㎡にこだわるなかれ」というタイトルでした。
既に子供が大きく2人いる家庭はどうしたらいいのでしょうか?この匿名のお便りにお答えしたいと思います。

「答えは中古を狙う」です

70㎡・3LDKにこだわると、好みでない場所、縁もゆかりもない場所のマンションを買うことになるかもしれませんが、そのタガを外し、70㎡未満・2LDKでいいんだと考えれば希望する場所で買える可能性がぐっと高まるという記事でした。

しかし、それは子供が小さいか、これから作るカップルゆえの方向性です。既に子供が大きく個室を与えなければならない年代の買い手には当てはまらない話です。

そこで、その先の記事が必要となったのですが、答えは前回の記事で伝わりにくかったかもしれませんが、「中古を探す」ことです。中古なら70㎡以上の3LDKというニーズにも答えてくれるはずです。

若いカップルにしても、ミドルにしても、マンションを購入するときに動かない条件は「予算」です。給料がどんどん増える、ビッグなボーナスが続くと信じられたバブル景気の時代には、銀行が貸してくれる限度いっぱいの無理なローンを組んで高い物件を買ってしまう人もありましたが、現在そんな人はいないはずです。

2021年現在、価格は急騰し、予算と物件価格のミスマッチ状態が起こっているのですが、郊外へ行けば、あるいは望まない地域を選択すれば予算内のマンションが新築で買えるのかもしれません。

中古なら、地域限定で買うことができるはずです。

このような「高値の時」に「買いたい」事情が起こっている人で、かつ広さの妥協がしにくい家庭にとっての選択肢は、以下の3つです。

  1. もともと希望していないエリアで価格相場の低いエリアに行く、
  2. 希望エリアではあるが駅からバスを使う物件を買う、
  3. 築年数15年以上など築浅でない中古物件を探す、

三択のうち、筆者のお勧めは3.の「中古物件を探す」です。ここで15年以上と断っている理由を付記しますが、築15年未満の中古は物件数が少ないこと、あっても新築と変わらないほど高いものが多いためです。 15年未満で割安な中古が希望エリア内に見つかれば、それに越したことはありません。最短で目的に近づくには条件を絞り過ぎないことも大事です。

中古物件は物件数が常時4万戸もある

新築マンションは2021年の場合で年間に33,636戸(首都圏全体)が発売されました。月平均3000戸弱となります。

これに対し、中古マンションの年間売り出し件数は東日本流通機構(REINS)によれば約18万戸もありました。

直近のデータでは2022年6月の売り出し戸数は16,000戸でした。

年間の売り出し件数で中古は新築の5倍以上にもなります。 数だけなら中古マンションは選択肢が新築より広いのです。もちろん玉石混交なので、「よりどりみどり」ということではありませんが、築年数を割り切れば必ず見つかると確信できます。

中古マンションは買いにくい、選びにくいという問題点がある

ただし、中古マンションには不透明な点・不安に感じる点が多々あり、それに対し仲介業者が新築ほど事前の準備を整えていないケースが多いので、決断に至るまでは手間も時間もかかると思っておく必要があります。

ここで中古が買いにくい理由を挙げておきましょう。理由は5つに集約できます。

理由(1)室内の見た目が悪い

中古マンションの多くが、壁が黄ばみ、浴槽は「湯あか」がついている、ガスコンロは油まみれになっていたりします。こうした光景を目にすれば、見学者の購買意欲が高まることはないでしょう。

理由(2)外観や共用部分が古ぼけていたり汚れていたりする

レトロ好きな人もあるとはいえ、日本人の多くは古い物より新しい物を好む傾向があります。新しいものは良いものという先入観もあるのでしょうか、一目で古いと分かると、購買意欲は急落するようです。

室内の見学前に必ず目にするのが外観であり、エントランスやロビー、エレベーター、共用廊下です。 定期的に清掃や修繕を実施していても、決して新築と同じようには見えません。

理由(3)設備が古い・ないものも多い

ディスポーザーは新築でも付かないものが少なくはないのですが、食器洗浄乾燥機は大半が標準装備されています。中古は食器洗浄乾燥機もない物が多いのが実態です。ビルトイン浄水器なども中古マンションでは少ないようです。

浴槽のまたぎは、新築マンションなら450ミリ以下が定番ですが、中古マンションは600ミリタイプが多いことに加えて、浴室内のデザインも「お洒落感」はかなり劣ります。

テレビモニター付きのインターホンが100%普及したマンションですが、モニターの画像がカラーか白黒かというと、築20年以上では白黒が多いのです。

理由(4)バリアフリーになっていないものが多い

1階の玄関ホールから住戸前までバリアフリーになっているだけでなく、室内も大きな段差がないのが最近のマンションですが、古いマンションでは共用部も室内も段差が解消されていないものが多いので、これにも抵抗感を覚えてしまいそうです。

理由(5)建物に対する不安が拭えない

中古マンションが買いにくい最大の理由はここにありそうです。 先に挙げた4つの理由はむしろ付け足しと言ってもよいほどです。

不安を具体的に言うと、次のようなものと考えられます。

  1. 耐震性の不安:幾多の地震経験から新しいマンションは対策がしっかりなされているが、古いマンションは十分ではないという漠然とした不安と言えましょう。
  2. 耐久性の不安:築20年以上の古いものを検討する人が主に抱く部分です。あと何年ここに住めるのだろうかというものです。
  3. 瑕疵がないかという不安:瑕疵は「隠れたキズ」というほどの意味ですが、悪意のない売主には追及できない瑕疵担保責任のことです。まさか欠陥マンションということはないだろうかという疑問と言い換えてもよい部分です。
  4. 遮音性の不安:これは新築マンションでも同じですが、古いものは最近のものより遮音性が低いという先入観が働くためと考えられます。

最近は仲介業者が売主に代わってガスコンロや湯沸かし器といった設備の瑕疵担保保証というサービスを導入していますが、重要な点は目に見えない構造的な部分の瑕疵に関するものです。

入居後しばらく経って(例えば数年先に)発覚したときどうなるのかという不安です。

個人の売主から購入する中古マンションですから、瑕疵担保は免責になっていて万一のことがあっても責任を追及する先はないのです。

中古マンションを購入するときの拠り所は?

では、中古マンションを買った人たちは、どこに安心の拠り所を求めたのでしょうか?あるいは、どのような考え方をして決断に至ったのでしょうか?

これは個人差のあることで、また調査データのようなものも発見できず、分かりにくいテーマですが、列挙してみましょう。

  1. 大手マンションメーカーの分譲したマンションだから大丈夫だろう
  2. 大手ゼネコンが施工したマンションだから大丈夫だろう
  3. 先の大地震でも特に修復が必要な箇所はなかったと説明を受けた
  4. 内見中、室内はとても静かだった。遮音性も悪くはないのだろう
  5. 清掃が行き届いており、管理状態も良さそうだ
  6. 管理人さんの目が光っているし、オートロックなのでセキュリティも良さそうだ
  7. 管理費等の滞納者がゼロと説明を受けた
  8. 売る人が少ないというから、きっと良いマンションなのだろう ⑨建物に傾斜はないようだし、東日本大震災の揺れにも耐えた物件なのだから耐震性は大丈夫だろう

大体こんなふうに考えて自身を納得させたのだと思います。

ここで気付くことがあります。売主と施工会社が大手というくだりです。逆に言えば、大手の物件以外は不安が解消できないことになります。

ところが、気に入って買いたい欲望が強まると、マイナス思考よりプラス思考というか、楽観的というか、そのような心理状態になるようで、

  1. 疑ったらキリがない。まあ大丈夫だろう
  2. 住んでみて不具合があったら売ればいいさ

などと自分に言い聞かせて不安を打ち消すのです。

中古マンションを検討するときのスタンスは?

中古マンションを買おうかというとき、買い手には、内覧の際の観察ポイント、見えない部分の指摘事項、調査方法など、一定の予備知識が必須です。

今日は、その中から「内覧時の観察ポイント」に絞ってご紹介しましょう。入居中のために観察を遠慮しがちですが、できるだけ売主さんにお願いして見せてもらいましょう。質問についても同様です。

①ひび割れの有無を目視で探してみる・・・長く放置しておくと雨水が入り込み鉄筋が錆びて、耐震性・耐久性ともに低下してしまうからです。 外壁や廊下の天井、バルコニーの天井などに30センチ以上の長いひび割れがあったら要注意です。タイルの剥離も同様です。

また、仲介業者を通じて、管理組合に大規模修繕(屋上防水と外壁補修)の予定はいつかと質問をしましょう。

この点検項目は、管理の良し悪しを見る重要なものとなります。

修繕積立金が十分でないためか、それとも管理意識が低い管理組合なのか、どちらにしても適時、適切に修繕を行ったマンションと、そうでないマンションでは、長い間に資産価値に大きく差がついてしまうからです。

②設備機器の耐久性をチェックする・・・ガス器具、エアコン、ディスポーザー、食器洗浄乾燥機、床暖房などは、有無を確認しつつ、何年使用しているかを尋ねましょう。 入居後すぐに新品と交換しなければならないのか、まだ数年は使えそうかの判断をするためです。

③結露の有無を調べる・・・北側に位置する個室を見るときは、明るさと通行人の足音を聞くことに加えて、窓の周囲の壁と天井に目を凝らしましょう。

黒ずんでいたり汚れがひどかったりするようであれば、冬季に結露ができやすいことを示すものであり、原因は断熱材の施工が十分でない可能性が疑われます。そして、リフォーム費用に大きく響きます。

④床・壁・天井の表面を全体的に点検する・・・トイレや洗面所の床の表面材(普通はクッションフロアという材料で仕上げてある)がめくれていないかどうか、壁紙の張り合わせ部分がめくれて隙間ができていないか、変色していないか、傷や汚れがないかどうか、フローリングの表面仕上げ部分がはがれていたり、傷が目立ったりしている所がないかどうかなども。 リフォーム工事の予定に組み込むかどうかの判断に必須だからです。

築年数15年以上に抵抗ある人も

見ず知らぬ人が住んでいた部屋に住むことに抵抗ある人も少なくはないのかもしれません。しかし、そのような人も賃貸マンションの場合なら何故か入居してしまうようです。

それはさておき、日本人の大半が新築志向らしいと聞きます。筆者の実感でも新築志向の人は多いと思います。しかし、最近3年くらいの実感としては、中古を目指す人が着実に増えていると言えます。

とまれ、中古には見映えの悪さもあって見学するとき新築マンションのモデルルームほどの感激はないと語る人が多いのも事実です。

それに加えて、15年、20年と築年数が長い物件の場合は、そこから果たして何年住んでいられるのかという疑問も浮かぶらしく、購買意欲がわいて来ないのだと語る人もあるようです。

新築を買うと70年住めるが、築20年の中古は50年しか住めないのか

「マンションって何年住めるのか」という質問をもらうことが時々あります。一般的には60年は持つよとか、100年は大丈夫などという意見もよく聞くところですが、メンテナンス次第です。

同レベルのメンテナンスを実行したらという前提にはなりますが、新築マンションには100年耐久のマンションを例外的とするなら、平均的には70年くらいと考えてよいので、築20年の中古は余命50年ということになるのです。

逆に言えば、築20年でもあと50年は住めるわけで、決して30年しか住めないわけではないという点が着眼点です。

しかし、あくまで適切なメンテナンスを実行した場合です。修繕積立金の増額でもめているようなマンションではメンテナンスが適切に行われない可能性も懸念されます。そのあたりも重要なチェック事項になるのです。

後悔しない買い物をすることは、たやすいことではないのかもしれませんが、筆者がお役に立てるならいつでも馳せ参じたいと考えています。 今日の記事の続きは、未公開資料NO.72「中古マンション購入のチェックポイント」として用意しておりますので、お気軽にご請求ください。こちらからどうぞ。

今日はここまでです。ご質問・ご相談は三井健太の個別相談【マンションレポート10件付】までお気軽にどうぞ。