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第54回【マンションの最後はどうなるの?】

三井健太
三井健太

【マンションの最後はどうなるの?】

標題のようなご質問をいただくことがあります。お答えはこうです。

日本で集合住宅というと江戸時代からあった「長屋」のことですが、鉄筋コンクリ―ト造となると歴史は浅く、日本国内で最も古く現存するものは、長崎県にある通称・軍艦島の住宅のうち、7階建の30号棟と言われます。1916年(大正5年)の建設で、日本初の鉄筋コンクリート造の高層アパートとされています。

世界文化遺産に登録されたことでご存知の読者も多いと思いますが、軍艦島は明治時代から昭和にかけて海底炭鉱によって栄え、最盛期の1960年(昭和35年)には5,267人が居住、人口密度は東京特別区の9倍以上、83,600人/km²と世界一に達したと言われます。

炭鉱施設・住宅のほか、小中学校・店舗・病院・寺院・映画館・理髪店・美容院・パチンコ屋・雀荘・社交場(スナック)などがあり、島内においてほぼ完結する都市機能を有していたそうです。

関東大震災の復興住宅として1924年(大正13年)から1933年(昭和8年)の間に、東京を中心に16か所のアパートが建設されましたが、その名を「同潤会アパート」と言いました。

2015年を最後にすべて建て替えられましたが、最も有名な建て替え例は青山アパートメントで、後に「表参道ヒルズ」となっています。

同潤会アパートは、すべて賃貸住宅でしたが(後に分譲された)、分譲マンションとしては、1955年に第一生命住宅(現、相互住宅)が「武蔵小杉アパートメンツ」を販売しています(後に建て替えられて「武蔵小杉タワープレイス)等」に生まれ変わった)。翌年には、日本信販(現UFJニコス)の不動産部門である日本開発(株)が「四谷コーポラス」を分譲しました。28戸の小型マンションです。今となっては安アパート風ですが2017年まで現存していました。

これが最古の民間による分譲マンションとして、築61年を数えました。その四谷コーポラスも建て替えられることが決まったのです(2018年現在工事中)。

マンションの建て替えは合意形成が難しく、事実上不可能な場合が多いのですが、ある要素が加わることで可能になるものです。

報道によれば、「四谷コーポラス」では28世帯が日ごろのコミュニケーションがよかったために合意形成がスムーズだったとあります(デベロッパーの旭化成不動産レジデンス談)。

筆者は、それだけではないと思うのです。何がポイントかというと、建て替え資金の捻出が比較的容易だったからです。

具体的な資金計画書を見たわけではないのですが、5階建て28戸が地下1階・地上6階の51戸に化けるようですから、もともと容積率に余裕があったか、容積率が割り増しになったかして建物のボリュームが増えたのです。増えた分を販売することで資金の大部分が賄えるからです。

建て替わる新築マンションのうち、28戸が所有者に渡されるか、金銭を受け取って他に移り住むかの選択になるわけですが、今回のケースは27戸が分譲対象とあるので、24戸が地権者に渡ることになったようです。

<マンションの寿命は百年?>

この報に触れて、昔のマンションは寿命が短いのか長いのか、果たしてどっちなのだろうか?そんなことを思った人もあったのではないかと思うのです。

先に述べた軍艦島は居住者のいない住宅なので、荒れ放題、「朽ち果てる寸前」という印象ですが、四谷コーポラスはコンクリートの躯体はしっかりとしていました。同潤会アパートも築80年過ぎて居住者があったのです。

つまり、マンションの寿命は、80年は優にある、石炭産業が今も健在だったら軍艦島の集合住宅には今も人が住んでいたとするなら、100年の耐久性があるとも思えるのです。

では、なぜ「四谷コーポラス」は61年で寿命を終えることになったのでしょうか?

コンクリートの躯体は、外からの目視では、まだ当分住めるような感じがしました。しかし、もしかすると雨漏りが頻繁に起きていたのかもしれません。エレベーターのない5階建てなので、不便をかこっていたのかもしれません。オートロックも何もないマンションなので、外部から管理人室の前をすり抜けて各住戸の玄関前まで侵入できてしまう不用心さから、セキュリティの高い住まいを望むようになっていたのかもしれません。

居住者の不満や願望を知る由もありませんが、住み心地が悪かったことは間違いないでしょう。

マンションは耐用年数の観点では、「鉄筋コンクリートの躯体」と「エレベーターや水道・ガス・電機などの設備」とに大別されます。寿命は、それぞれに異なります。

躯体は百年であっても、設備は40年程度と言われます。エレベーターは長くても40年で交換しなければ危険と言われます。

いずれにせよ、何もしないで永久に存続するわけではなく、人間と同じように、年齢を重ねればどこかに故障が起きますし、筋肉が減ったり、骨が弱くなったりもするのです。また、百歳まで生きる人がある一方、60歳くらいで死んでしまう人がいるように、マンションの寿命もばらつきがあります。ンションの躯体(構造体)の耐用年数は100年くらいと言われています。但し、適切なメンテナンスを継続的に実施した場合ですが。

マンションが、人間の生活に適するものであるためには、コンクリートの躯体以外に、電気や水道、ガス、排水といった機能が残っている必要がありますが、これらの寿命はコンクリートよりはるかに短いのです。従って、これらのメンテナンスと交換などの措置が必須になります。

いずれにせよ、何もしないで永久に存続するわけではなく、人間と同じように、年齢を重ねればどこかに故障が起きますし、筋肉が減ったり、骨が弱くなったりもするのです。また、百歳まで生きる人がある一方、60歳くらいで死んでしまう人がいるように、マンションの寿命もばらつきがあります。

 マンションが短命で終わるもの、長持ちするものと差が出てくるのは、次にあげる要素が大きく関係しています。

①劣化のしにくさ

②設備配管類の維持管理のしやすさ

③入居後の適切なメンテナンス

④地震などの外的要因

耐久性を知るには、「住宅性能表示制度」(2000年制定)を利用する方法があります。

同制度を利用したマンションでは、そのマンションがどれだけ長持ち仕様で造られているかを、一般の人にもわかりやすく表示しています。それが「劣化対策等級」というものですが、 等級ごとに、以下の耐用年数が期待できるマンションであることを示しています。

■等級3……おおむね3世代(75年~90年)

■等級2……おおむね2世代(50~60年)

■等級1……建築基準法に定められた対策がなされている(最低基準)

新築マンションを調べていると、最近は半分以上が「等級3」の性能を有しているようです。

ということは、多くのマンションが75年以上の寿命があることになります。しかし、等級2以下でも、メンテナンスを適切にして行えば同じくらいは持つはずです。逆に、等級3のマンションでも設備を含めてメンテナンス・交換をきちんと実施しなければ寿命は50年くらいで尽きるかもしれません。

寿命の長さは「メンテナンス」の仕方がカギを握るということになりそうです。最近のマンションは分譲時から「長期修繕計画」を立案し、少なくとも30年間は計画的に大規模な修繕をして行きましょうと売主デベロッパーは提案してくれています。

購入後は売主との関係は薄れますが、居住者(オーナー)は管理会社の助言に従い、定期的(3~5年ごと)に計画を見直し、30年後も、その後の10年なり20年なりの新計画書を策定してメンテナンスを適宜行うことが必須になります。

<中古マンション購入時の不安は余命か?>

新築の方が中古より何となく安心と考える人が多いようです。購入予定者(ご相談者)との会話から筆者が心理分析した結果や具体的にヒヤリングした結果から受ける印象です。

「新築の方が、気持ちが良いから」と「中古は長く住めない気がするから」というのが最も多い理由です。

前者は理解できますが、後者の理由で中古マンションの検討を最初から諦めてしまうのは勿体ないと思うのです。なぜなら、中古の方が新築より良い物件も少なくないからです。

良い立地にある、良い間取りが多い、オープンスペースの樹木が育って無機質なマンションに彩を添え、マンション全体の印象が良い、管理状態も分かる(居住者のマナーの良し悪しが分かる・管理意識の高さが窺える)といった長所が中古マンションにはあるのです。もちろん例外もあるのですが、新築に劣るものではありません。

「長く住めない気がする」というのも正しい認識ではありません。築75年がマンションの寿命だとして、築20年のマンションの余命は55年です。新築は余命75年です。この差を何と見るか、筆者は35歳のご相談者に聞くと、55年住めれば何も問題ないと答えが返ってきます。55年も住み続けるとは考えにくいとも語ります。

50歳の方は永住したいと言います。そして、「55年あれば百まで住み続けられるね」と即座に答えが返ってきます。

しかし、やがては部分的な修理では間に合わなくなって全部の造り替え、すなわち建て替えの必要が起きることでしょう。

これまでの例は平均39年で建て替えが実行されています。(国土交通省調査)。短いものでは18年(公団の宇田アパート・東京都渋谷区)、20年という例もあります。この短さの原因は、高度成長時代に「質より量」優先で建てられたことにあるのです。早く言えば、先のことまで考えられていなかった粗悪な集合住宅が多かったためです。

最近のマンションには、そうした粗悪なものは少ないと考えられます。ともあれ、いつか寿命がくることは間違いありません。

そのとき、マンションの権利関係はどうなるのですか?その費用は誰が支払うのでしょうか?それとも、そのマンションに対する権利(?)がなくなってしまうのでしょうか?――このような疑問を持つ人もあるようです。

建て替えの必要が起こる状態のマンションは、居住性が相当悪化しており、所有者が賃貸している比率が高く、最悪の場合はスラム化している可能性もあります。

そうなると、建て替えの計画は合意形成が困難です。所有者が高齢のため、建て替えのための諸事が面倒だからこのままそっとしておいて(建て替えは私があの世に行ってからにして)と反対する居住者もいるでしょう。

マンションの建替えは、区分所有法によって所有者の5分の4以上が賛成しないとできないことと、住民の費用負担の問題などがあって、建て替え決議は相変わらず難しいのが実情です。

建て替えの必要を感じたときから実現までには長い年数がかかっています。たとえば、有名な「同潤会代官山アパート」の場合では、12年を要しています。

建て替えには、巨額の費用がかかります。これをどのようにしたかと言いますと、再開発や総合設計などの手法で容積を倍増して、「保留床」という財産を生み出し、それをデベロッパーに売ることで、建て替え費用に充てたのです。

容積とは、「敷地面積の〇〇%までの床面積の建築を許す」という都市計画法に定められた建築の要素ですが、東京都心の超高層ビルが建っているような地域は1,000%、郊外の一戸建て住宅街は100%というように幅があります。

仮に、容積率300%の地域に150%の範囲で建てられた老朽マンションがあったとします。そこに、限度の300%まで面積を増やした新しいマンションを建設すれば、増えた分を売却することで建設費を生みだすことができるという計算が成り立ちます。

小泉内閣時代に規制緩和政策の流れを汲んで、容積率も緩和されました。従来200%しかなかった場所が300%に増えたり、都心では様々な新制度を使って1,000%の場所に1,500%もの容積を認められたりしたケースすらあるのですが、今は停滞しています。

昔建てられた公団や公社のマンションには、容積緩和策がなくても、敷地利用にゆとりあるものが多いのですが、民間マンションでは、こうしたゆとりの設計は皆無です。従って、床面積を増やすことができないのです。ということになれば、建て替える際には、一時金など莫大な金額の負担を強いられる可能性があります。

修繕積立金に、将来の建て替え費用までが織り込まれた物件はありませんから、建て替えの計画には、その費用が大きな問題になることは間違いないのです。

都市計画は、時々見直しが行われます。そして、容積率が変更されることもあります。マンションの分譲時に200%だった地域が300%の地域になるかもしれません。そうなれば、保留床が生まれ、建設費用の捻出は可能となります。しかし、その逆もあるのです。結局、そのときになってみないと分からないわけです。

老朽化が進み、建て替えの話もない。住み心地も悪いから、売却して別のマンションか一戸建てに転居するという所有者も増えていくでしょう。

しかし、何代目かの所有者は不動産業者である可能性もあります。なぜなら、周辺地域と合わせて再開発する場合もあるからです。

終わり

 

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