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「資産価値」に注目し、できるだけ損しないマンション選びについて述べても、それを「はかない言葉」としか受け取れない人も少なくないと想像します。
なかんずく、地方都市に居住する人はその感が強いことでしょう。
地方都市では、そもそも東京のような高いリセールバリュー(売却価格)は期待できないからです。無論、首都圏でも郊外では地方都市並みの売却価格しか期待できない所もあるのです。
そこで、高いリセールバリューが期待できない場所で選択する場合の考え方をお伝えしようと思います。
●売却したとき手元に現金が残らない悲しさ
10数年経過し、いざ自宅を売ろうかというとき、調べてみたら売るに売れないという事実を突きつけられショックを受ける人があります。
理由は、売却見込み額の低さもさることながら、残った借金(住宅ローン)が売却額より多いため、銀行との清算にあたっては預貯金を崩して追銭(おいせん)しなければならないことに気付くからです。
住宅ローンは35年の最長で組む人が多いと思いますが、その場合、例えば15年経過すると、仮に1%の固定金利なら、元金はおよそ40%減ります。ところが、頭金10%・ローン利用90%で購入したような場合、自宅が50%もダウンしたら売却代金だけでは住宅ローンの精算ができないことになります。
もし、値下がりが30%程度で済めば頭金部分は返って来る計算になるのですが、物件によっては微妙なところです。金利が高い場合も同様に残高が多いので、精算が厳しくなります。
10年しか経過していない段階で売却する人は少なくありません。様々な家庭の事情がそうさせるのですが、そのときの住宅ローンの減り方は25%程度(金利が1%程度の場合)です。従って、そのときの価格ダウンが25%ほどであれば頭金部分を取り戻すことができますが、売却見込み額が35%ダウンだったら、手元には1銭も残らないという結果もあり得ます。
まさか、そこまで下がることはないだろうと高を括っている人は結構多いようで、惚れて買ったというだけでなく、何年か住んで愛着のある我が家ゆえに自己評価を高く見積もりがちなのです。
具体的な物件名の公表は控えますが、某調査会社のデータ(リスト)によれば、10年後価格の騰落率ワースト50位のトップは、何と50.1%ダウン、50位でも38.7%なのです。これは、地方マンションではなく、東京都23区内の中古マンションリストなのです。その中には大手マンションブランドも散見されます。
ただし、これは直近のデータではありません。相場が安定的だった時期のものです。今から10年以上先の売却時は相場が今と同じ程度かもしれないだけに、このデータは示唆的です。
ともあれ、売ったとき手元に1銭も残らない状態を想像すると、悲しくてやりきれない――そんな所有者の姿が浮かびます。
●値下がりの許容範囲はどこまでか
では、1銭も手元に残らないような結果であったとき、その事実をどのように受け止めたらいいのでしょうか?
例えば10年後に売却するとき、値下がりをどこまで許容できるかという問題について考えてみることにします。
まず、購入したマンションを仮に賃借したら賃料はいくらかを調べます。例えば20万円と仮定しましょう。としたら、20万円×120か月で2,400万円の支出になりますね。
実際の支払いは住宅ローンの返済金の内の金利部分と管理費等で、毎月10万円(※)だったとすれば、10年間合計では1200万円になりますから、差し引き1,200万円お得ということになります。
※金利部分しか計上しないのは、元金部分の返済はローン残高を減らすための貯金のようなもので、「支出」ではないからです。
言い換えれば、借りたら20万円の家賃負担が必要なマンションに10万円で住めたわけですから、その差10万円(10年間合計1200万円)がお得だったという計算です。
ということは、マンション価格が1,200万円下落しても損はないことになります。
ちなみに、このマンションを現金購入した場合はどうでしょうか?負担は管理費等だけの毎月30,000円ほどで(厳密には固定資産税なども加わりますが説明を分かりやすくするために省略) 住めるわけです。10年間では360万円だけで新しく広いマンションに住めるというわけです。
現金購入の場合、家賃なら2400万円払うべきところ360万円で住めるわけですから、その差額2040万円がお得ということになります。ということは、そこまでの値下がりは許容範囲と言えます。
購入マンションが郊外にあって、将来の値下がりが必至と予想できる場合で、購入価格が4000万円だとしましょう。頭金を20%、80%の住宅ローンを利用して購入するとします。
このような条件が上記のシミュレーションの設定なのですが、1200万円ダウンの2800万円まで許容できるとして、ダウン率は30%とはじかれます。
10年後の価格を誰も当てることはできませんが、首都圏郊外の築10年のマンションは、概ね新築相場の70%くらいなので、上記試算はギリギリの許容範囲となりました。
ところが、別の角度から見ると許容範囲は変わるのです。その計算をしてみましょう。
住宅ローンは80%の3200万円でした。これが10年後には25%減って2400万円になっていますので、30%の値下がりで2800万円が売却価格だったとしたら、差し引き400万円が手元に残る計算です。仲介手数料が90万円なので、最終的には310万円の手残りとなります。
頭金を800万円入れたので、大きく減らす結果となりました。せめて頭金部分は回収したいと望んだら、あと650万円は高く売らなければなりません。
となると、2800+650万円は3450万円なので、値下がり率は15%未満が望ましいということになります。10年で15%ダウンに留まるというのは、地方都市や首都圏郊外都市では不動産インフレが来ない限り、非現実的な望みというほかありません。
●最後は割り切り方か
値上がりが期待できそうにない場所で選択するほかにない人は、やはり経済的損失を被るかもしれないと思うべきかもしれません。
しかし、ものは考えようと言いますが、同じマンションの同じ間取り、同じ階であったとしても、購入する方が賃借するより充実感は大きいはずです。なぜなら、賃借では得られない周囲の賞賛などから来る満足感、快適な暮らし、幸福感、老後の安心感などを手に入れることができるからです。それがマイホーム購入の最大のメリットでもあるのです。
こうしたものを私は「精神的利益」と言っているのですが、これは経済的利益(得失)とは比べようがない、測り知れない大きな価値と考えます。最後はこう割り切るしかないのです。というより、ここにこそマンション購入の目的を見出すべきとも言えましょう。
終わり